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第33回セミナー



「第33回CTセミナー報告」

   村山 太郎 井出 新吾

 

8月24日、長野県JAビルで「長野県CT撮影技術研究会 第33回セミナー」が開催されました。 

 今回は「臨床に活かす画像評価」をテーマに2名の講師を招き、主にCT画像の物理評価について学びました。物理評価の重要性は技師にとって共通の認識ではありますが、“楽しい”、“よく理解できる”と感じる技師は少ないのではないでしょうか。今回は難しい内容を分かりやすく身近に感じられるように話してくださる先生方をお呼びしました。


 講演に先立ち、恒例の施設発表が行われました。新たに導入されたCT装置の特性を分析した研究や、ピッチファクターとモーションアーチファクトの関係性を探る発表など、今回のテーマに沿った興味深い内容が共有されました。


 講演1は「今の時代だからこそ考える『画質を見える化する』ということ」と題し、昭和大学病院 放射線技術部の後藤光範先生にご講演頂きました。

講演はまず、「画像とは何か」や「物理評価の意義」といった基礎的な内容から始まりました。その後、信号とノイズ、MTF、NPS、SD、周波数といったよく耳にする用語について、何を表しているのか、そして逆に何が表現できないのかを体系的かつ分かりやすく解説していただきました。

特に興味深かったのは、FBP(Filtered Back Projection)ではこれらの指標が直感的に理解しやすい一方で、逐次近似応用再構成(Hybrid IR)やDLR(Deep Learning Reconstruction)といった非線形の再構成法が登場し、線量を下げても見た目上きれいな画像が得られる場合があるものの、実際には信号が低下している可能性があるという点です。これにより、病変を見逃すリスクや不要な検査が行われるリスクがあることを理論的に学びました。また、すべての撮影に同一条件を適用することで、無駄な被ばくが生じる可能性も示唆されました。

 後藤先生は、今の時代に必要な「画質評価」とは「挙動評価」であると提言されました。つまり、各検査で確認したいことに対して、現在設定されている撮影条件が適切であるかどうかを都度考えることが重要であることを強調してくださいました。

 

 講演2は『CT撮像技術と画像の関係』と題し、国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 放射線技術部副放射線診断技術室長の瓜倉厚志先生にご講演いただきました。

 冒頭では臨床画像は本来、診断タスク(目的)に基づいて最適な画質と線量が決定されるべきですが、近年多用されているHybrid IRやDLRに対する誤解から、診断タスクを無視した根拠のない線量低減が行われているケースが散見されるとの警鐘が鳴らされました。過度な線量低減のもとでHybrid IRやDLRを用いる場合、特にコントラストの付きにくい小さな腫瘤性病変が描出されない可能性があるとのことです。

 また、装置導入時からメーカーが提示した条件をそのまま使用し続けている施設も少なくないと思いますが、診断タスクを達成できているかを確認し、必要に応じて線量を再設定する必要があると説かれました。さらに、線量設定以外で注意すべき点として、過度な強調処理や条件設定によって生じる偽像の問題についてもご教示いただきました。

後半では、体位や造影方法の工夫によってアーチファクトを低減し、診断に有用な画像を取得するプロトコルをご紹介いただきました。これらは装置のスペックに依存しない撮影法であり、自施設でも早速取り入れてみたいと感じました(例: 肺塞栓の90秒注入80秒後撮影法や、折りたたんだタオルを頚部背面に挿入して甲状腺にかかる骨由来のダークバンドを軽減する方法)。既存の撮影法に対しても、さらに良い方法を探求し続けること、うまくいかない原因に真摯に向き合い、柔軟な思考で解決策を模索することの重要性を改めて感じました。

 

 今回のセミナー全体を通じて感じたのは、CT装置の進歩は材料工学や機械工学、AIの発展、そして画像処理技術の進化によるものですが、それを実際に患者に対して適切に使用し、患者の利益につなげるのは私たち技師であるということを改めて実感しました。一般的に「技術は道具であり、それをどう使うかが重要である」と言われますが、まさにCT装置の最新技術を患者にとって有益なものにするか、あるいは逆に害をもたらしてしまうかは技師の腕にかかっている、ということを改めて考えさせられるセミナーでした。

 

 次回第34回CTセミナーは、2025年2月8日(土)相澤病院ヤマサホールにて「心臓CT」をテーマに開催予定です。






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