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第35回セミナー


長野県CT撮影技術研究会 第35回セミナー報告

佐久医療センター 中村聡志

2025年8月23日 JAビルにて長野県CT撮影技術研究会第35回セミナーが開催され、51名が参加しました。昨今のCT検査においては、造影剤による副作用への迅速な対応や重篤所見の報告体制の整備が求められるようになってきました。今回は、「造影CT -リスクマネジメントとSTAT画像-」をテーマとし、その分野に造詣の深い2名の講師をお招きし、臨床現場ですぐに活かせる内容で多くの知見を学ぶことができました。

 

まず、情報提供としてGEヘルスケアファーマ株式会社様より「ヨード造影剤副作用ハンドブック」を配布いただき、掲載内容を中心に解説をいただきました。近年、添付文章にも掲載された“Konis syndrome”に関する話題提供もいただき、急性アレルギー反応に伴った急性冠症候群を念頭に置いた対応も求められることを教えていただきました。

 

施設発表では、丸子中央病院 原田先生、相澤病院 池田先生、佐久医療センター 諏訪先生より造影検査のリスク管理について各施設の取り決めや運用についてご発表いただきました。特に喘息患者への対応では、事前の造影剤少量投与を行なってから放射線科医による検査施行可否を判断するご施設や、事前の予防薬投与にて対応するご施設があり、自施設の運用を再考するうえで有益な情報となりました。また、各施設で経験された稀少例や難渋症例についても紹介され、内容の濃い情報共有ができたと感じました。

 

講演1では、「造影CT検査の安全運用“update”」と題し、JR仙台病院 放射線科 主任医療技師の佐々木哲也先生にご講演賜りました。近年、造影CTの件数は増加傾向にあり、その有害事象は重篤なものほど発生頻度が低いものの、日常診療においては1〜2日に1例程度の軽度副作用に遭遇する可能性があり、「安全な運用」が注目されてきています。造影剤による有害事象は、急性副作用や血管外漏出、造影剤腎症、遅発性副作用などに分けられますが、今回は急性副作用にフォーカスを当ててお話しいただきました。

従来、副作用低減策としてステロイド前投薬が行われてきましたが、「生理的反応」には効果が乏しいこと、さらに”Breakthrough Reaction”が存在することから各国のガイドラインでも推奨されておりません。その一方で、先生から副作用を低減する「5つの攻略法」が提示され、①患者の不安軽減 ②検査前の水分補給 ③絶食の見直し ④造影剤の加温 ⑤造影剤の種類変更 が挙げられました。特に①の不安の軽減については、不安の程度と副作用に関係性があり、音楽やホスピタルアートなどの検査室環境を整えることで不安を和らげることが効果的であると数多くの文献から示していただきました。さらに、⑤造影剤の種類変更についても、最新の知見において、「側鎖」によって分類がなされ、異なる側鎖の造影剤使用により重度のアレルギー反応再発率が有意に低下した報告をご紹介いただきました。これによりガイドラインの変更の動きも出てくる可能性もあり、今後の動向に注視したいと思いました。佐々木先生は、急性副作用はゼロにはできないが、限りなくゼロに近づけることはできると述べられました。その方法は、どんな施設においても比較的容易に実施可能であり、是非とも各施設で実践していってほしいと感じました。

 

講演2では、「緊急を要する異常所見認知のポイント -過去の事例から造影CTを考える-」と題し、奥州市総合水沢病院 医療技術部放射線科 主任診療放射線技師の高橋伸光先生にご講演賜りました。

日本放射線技師会のSTAT委員会の委員である高橋先生より、まずSTAT報告とは「「生命予後に かかわる緊急性の高い疾患の所見を直接、放射線科医に報告すること」とお話いただきました。ここでは、看護師さんなどの第三者を介した報告ではなく、口頭で医師に直接報告することが重要と述べられました。また、医師が不在であった場合の別ブラン(上級医や同じ科の部長に報告)を用意しておくことが大事と教えていただきました。また、適切な報告を実践したという事実を証明するためにもHISには“行為の記録”を残し、RISには“所見の記録”をしておくことで後の振り返りや教育にもつながると述べられました。高橋先生のご施設では、毎朝全体での症例報告を行い、医師によるフィードバックをもらい、それを月報にしてまとめておられるとのことで、日々の振り返りと共有、そしてその評価をするということが質の高い異常所見報告体制を作るために大事であると感じました。さらには、過去の失敗から「所見に気づいたら必ず報告する。明らかな所見でも報告する。」というルールを定め、より確実な報告体制を構築されている点も印象的でした。

後半では急性腹症に焦点を当て、多くの症例を供覧しながら所見認知のポイントを解説されました。“DATE”というキーワードを提示され、これらを意識して読影することの重要性を強調されました。“DATE”とは、Dirty(脂肪織の濃度上昇)、Air(腹腔内遊離ガス)、Thickness(壁の肥厚)、Effusion(Enhanced)(腹水貯留)の頭文字を取ったもの。

また、急性腹症の造影CT撮影においては動脈優位相の撮影が有用であると述べられ、動脈優位相の画像で初めて指摘できる所見がいくつか存在しており、その重要性を再認識しました。

 

今回のセミナーでは、休憩時間にも講師の先生へ積極的に質問する参加者の姿が見られ、活発な意見交換がなされました。本研究会のセミナーが参加者にとって有意義な場となっていることを実感し、世話人の一人として大変うれしく思いました。今後も代表世話人を中心に、より良い研究会となるよう努めてまいりたいと思います。


次回第36回CTセミナーは、2026年2月21日(土)相澤病院ヤマサホールにて「手術支援」をテーマに開催予定です。皆様のご参加を心よりお待ちしております。


共催メーカー

長野県CT技術研究会

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共催団体

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